プロ顔負けの高校生!養蜂だけじゃない、地域に根ざしたユネスコクラブの取り組み
取材日:2021/11/16

ゲスト:愛知商業高等学校 ユネスコクラブ
3年生 副部長 田口育海さん・3年生 大木香乃さん
インタビュアー:同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーションコース
松榮秀士・西口優毅
松榮)ユネスコクラブの活動について聞かせてください。週にどのくらい活動していますか?
田口)平日は月曜日だけ授業が7限まであり、4時まで授業があるので6時半まで部活をやっています。火曜日から金曜日は4時から6時まで毎日です。
松榮)一日の活動スケジュールはどんな感じですか?
田口)部員ごとにそれぞれ取り組んでいる活動が違うので、活動している事柄についての調べものをして、まとめた物を元に話し合いをします。ある程度カタチになったら協働している方との打ち合わせのスケジュールを調節してやっていくというサイクルで回しながら活動しています。
基本的な活動の流れはこんな感じで週に6日(土日のどちらかは一日か半日)で行っています。
松榮)忙しい時期などはありますか?
田口)夏頃が一番忙しいです。養蜂は春夏辺りが採蜜の時期で、また8月頭に生徒商業研究発表大会の県大会・東海大会が入ってきたりするので、大会に向けて資料を作ったり、発表の練習したり、東海・全国を目指すとなるとまた新しい企画を進める必要があるからです。
松榮)中学生のときから、ユネスコクラブを知っていたのですか?それとも入学してからですか?
大木)私は入学してから学校紹介でユネスコクラブのことを先輩がプレゼンをしていたんですけど、それを聞いて「私もこういう風になりたい!」と先輩に憧れて入部しました。
松榮)先輩のプレゼンを見て、その人に憧れて入部したということですが、今はお二人とも3年生ということで、ミツバチや養蜂のことを話したり、商品開発を考えたりと、先輩に憧れるところから、自分の中で変わっていくきっかけってどんなことでしたか?
大木)先輩が引退したときから、自分たちでやらないといけないという思いがありました。1年生のときに蓄えた知識を自分から発信してくようになったりと、きっかけは先輩の引退と代替わりのタイミングですね。
田口)2年生の初期の頃から、まとめ役を任される機会があって、その頃から「先輩方はすごいけれど、やっぱり自分もそれができるようにならないと3年生になったときに困るんだな」というのを徐々に思うようになりました。もちろん、その頃は先輩方もまだいらっしゃるので、今思えば7割ぐらい補助を受けながらみんなをまとめていたと思いますが、先輩が今までどうやってみんなをまとめていたのかなとか、自分はどうやってやればいいのかとか考えながら色々できるようになって、3年生に向けての下地づくりができたのだと思います。
松榮)上下関係は強いですか?
田口)上下関係はあまり強くないと思います。 先輩たちの方が活動のこともよく知っているので、どんなことをやるのかを決めるのは基本的に3年生が中心となりますが、一緒に取り組んだりする場面では「意見に反論があったらどんどん言ってね」と先輩たちが言ってくださっているので、みんなが対等に意見を出せるような雰囲気で活動しています。

松榮)どのように部長を決めましたか?
田口)部長は先輩方や顧問の先生から指名していただいて決まりました。
松榮)毎回部長を選ぶ方法は変わりますか?
田口)毎回違いますね。自分たちで話し合って決める時と先輩や先生方から指名していただいて決定する時があります。
松榮)色んな活動をしていますが、どんなことが大変だと感じますか?
田口)色んな活動を並行してやっているので掛け持ちとかをする子もいて、関わり方の度合いによってそこの間とのやりくりなど、両立していくのが大変です。
松榮)掛け持ちというのは、このミツバチプロジェクトの中での掛け持ちですか?例えば、商品開発しながら違う商品開発にも関わるといったものなのか、それとも別の部活との掛け持ちですか?
田口)この部活の中での掛け持ちですね。私たちは養蜂活動もしながら商品開発なども進めていて、イベントに参加したり色んなことをやっていて、特に大会へ出場する時とかは大変です。

松榮)商品と共に地域の歴史や文化などをすごく丁寧に話されていて、そういったことって勉強したり、調べたりしないと話せないと思うのですが、どのように調べたのですか?
田口)入部して初めの1ヶ月はミツバチのことや、SDGsのことなど、私たちの活動に関することをとことん調べる期間がありました。
松榮)その期間は先輩がついて調べていたのですか?
田口)そのときは先輩はつかずに、最後共有タイムが設けられていて、自分たちが調べて分かったことをそれぞれ発表するのですが、そのときに先輩が見てくださいました。1年生のときは、先輩の鋭い質問に「あ、えっと」となりながら答えていましたね。
松榮)先輩の話の上手さに、1年生のときは衝撃を受けたりしませんか?
田口)ユネスコクラブに入部してから、割とすぐに先輩と話せる機会があるのですが、そのときに先輩方の話のテンポの良さにまず衝撃を受けて、話についていくのが初めのうちは苦労しました。
松榮)それからどうやって1年生は成長するのでしょうか?
田口)人前で話せるようになりたいと思って入部してくる人も多いので、先輩が話されてる姿を見たりして、そこで少しずつ刺激を受けながら、初めは先輩の質問に対してちょっとしたコメントの付け足しを話す程度ですが、活動知識も日々蓄えたり、人前で話したりして、積み重ねで成長していくのだと思います。
松榮)ビジネスってどこから考えるのですか?
田口)調べ学習からですかね。
松榮)ビジネスを調べようとする時、何を調べるのですか?
田口)私たちが元々活動の目的としているところに地域活性化っていうのが根底にあり、生徒商業研究発表大会っていう大会自体も、地元の課題を高校生が発見してそれをビジネスの力で解決するという取り組みを発表する場なので、まずこの地域にはどんなものがあるのかなどを調べてそこに何か課題とかあるのかなど、特に気になったものをまたさらに調べていく感じです。またその中でインタビュー調査を行ったりします。
松榮)調べる時は、インターネットのホームページだけですか?実際に街を歩いて聞き込みをしたりするのですか?
田口)インターネットでまずは調べて、気になったところに実際に行きフィールドワークをしたりインタビュー調査を行ったりします。アンケート調査は今年はちょっと厳しかったのでできませんでしたが、例年、栄の地下街などへ行き、アンケートをお願いしています。
松榮)地域のことを調べ学習しようというのは代々引き継がれているものなのですか、それとも自分たちで何をしようか調べるところから始めるのですか?
田口)代々引き継がれていることが多いですかね。このタイミングではまずこれを調べようといった感じですね。毎年その大会に出させていただいているので、その流れで年毎にちゃんと調べ学習をして何に取り組むのか決めています。
松榮)地域について調べ、色々と分かってから自分たちの商品はハチミツだと決まったわけですが、そのあとはどう動いていくのですか?
田口)わりと蜂蜜だけにこだわっているわけではなく、大会に出場する時に、その大会に限っては蜂蜜を活動の中で使える時があるのですが、大体は地域の課題解決を重要視しているので、今年の場合は伝統工芸品に着目して活動していました。伝統工芸品のイメージとしてあると思うのですが、だんだん需要が減って市場が縮小したり、職人が高齢化して後継者不足がよく問題視されて取り上げられていると思います。そこで、自分たちにも何かできないかと考え、今年は活動を展開しました。STEAM教育という教育理念があり、STEAM教育と伝統工芸品をかけ合わせれば、教育の延長線上で学生や若者たちに分かりやすく楽しく伝統工芸品のことを伝えることができるのではないかという思いから生まれたこの「STEAM教育×伝統工芸品」のオンラインイベントを継続開催するという形で今年は新しくビジネスを展開をしていました。

松榮)ユネスコクラブの商品はブランドとして提供している感じなんですか?
田口)あまり実感はないですが、アイスクリームの商品は結構認知度も上がってきていて、「あ、これユネスコクラブの商品だ」と言われているかもしれないですね。あと、ぷらんぼんさんの通販でもユネスコクラブとの商品を販売してもらっていて「ユネスコさんのあのアイスおいしかったな」と再び注文してくださる方も実際いらっしゃるみたいです。
松榮)ユネスコクラブさんは地域での認知度は高いですか?
田口)この地域のイベントにも出させていただいたりして、地域の方々にもユネスコを知っていただく機会が増えてきたことで、「商品食べたことあるよ」というお声も最近はよく聞くようになりました。
松榮)ビジネスとしてはどこから収益を得るのですか?
田口)基本的にはイベント参加者の方からです。しかし、利益を出すビジネスをするのはなかなか難しくて、実際に出せた利益は数十円ぐらいです。経費をまず参加費の中で回収してその上で協力してくださった企業の方とかもいらっしゃるので余った利益の何パーセントかを分配しています。
松榮)どうやって金額設定とか考えていますか?
田口)わりと金額設定も調べていますね。
松榮)その時はどのように調べるのですか?
田口)商業高校なのでマーケティングも授業の一環でやっていて、その教科書とかを見てどんな価格設定の方法があるかなど調べています。
後はインターネットとかも使って、他のオンラインイベントはどのくらいの価格で実施しているのかを調べたりして自分たちのイベントの価格はどのぐらいに設定するか話しあったり、協力してくださってる企業の方に相談してアドバイスをいただいたりします。
松榮)商品提案は面白いですか?
田口)私たちが商品開発する上で、どんな商品にしたいのかなど込める思いも大切に考えているので、自分たちの考えていたものが形になる瞬間はやっぱり特別感がありますし試作品を経て形になっていくのは面白いです。
松榮)自分たちの思いをどうやって表現していますか?
田口)各々持ってくる感じです。こんな商品作ってみたいなという意見を持ち寄って話し合いの中でそれぞれ発表していいなと思ったところをちょっとずつ融合して作ります。
松榮)例えば、希望のはちみつりんごや幸せのはちみつカカオなどの商品開発をする上で、商品に対する思いはどんなところに出てくるのですか?
田口)「希望のはちみつりんご」は東日本大震災が起きた頃に開発された商品で被害を受けた岩手県の陸前高田市を名古屋市が丸ごと支援しているということを知り、私たちもその名古屋市の動きに合わせて何かできないかなと考え、始まった商品開発になります。
松榮)陸前高田市に実際に行ったことがないけれど、名古屋市がしている取り組みが自分たちの活動の一部になるということに対してはどう考えていますか?
田口)私たちのこの活動は、周りの方々と共同させていただいていることも多く、その中で名古屋市が主催しているイベントに私たちも招待していただいたり、そこで販売活動ブースを出店させていただいたりしていて、交流があるので協力していただいている方の考えていることや取り組みに対して私たちも共感して、一緒にやっていきたいと思いました。
松榮)色んなことを作ってやってきて何が一番面白いと感じましたか?養蜂をすることなのか商品の開発なのか、楽しいと感じることはなんですか?
田口)大会ですね。全国にいける「生徒商業研究発表大会」という、自分たちでビジネスを展開してそれを発表するっていう大会があり、この部活の中で一番大きい大会で、力を入れている分思い入れがあります。

西口)沢山のイベントをプロデュースしているなと思ったのですが、どんなイベントがありましたか?また、どれくらいの頻度でやっていますか?
田口)今年は『伝統工芸品×STEAM教育』をテーマにしたイベントを二度開催しました。こちらのイベントは私たちが「伝統工芸品を未来につなげるような活動がしたい」という思いがあり、開催しました。他に、大会での発表をきっかけに外部の方と地域を盛り上げるイベントをしませんかと話を持ちかけてくださった時は、企画を考えて企画書を作ったりすることもあります。あとは、大会がないタイミングや余裕のある時に、ミツバチに関して発信できるようなことをやってみたいと思い、「オンライン夏休み自由研究お助け隊!」というイベントをしました。
西口)今までで印象に残ったと思うイベントはなんですか?
田口)「オンライン夏休み自由研究お助け隊!」」のオンラインイベントですね。このイベントは初めて自分たちの学年だけで企画したイベントで、自分たちが主導でどんなことをやるか考えたイベントになります。沢山のイベントや大会、企画をしてきましたが、初期段階から携われる楽しさだったり、自分たちがやりたいと思ったことが実際にやれる、実現できるという面での楽しさとかもありました。また、このイベントに関してはメディアの注目度も凄く高くて、テレビ取材の方も来ていただいたり、新聞にも載せていただき、多くの方にお知らせすることができました。イベントも定員いっぱいまで申し込みがあって、自分たちの企画が成功したという実感があり、今でも印象がすごく強いし、楽しかったです。

大木)私は『伝統工芸品×STEAM教育』のイベントが面白かったです。二度開催していて、一度目は参加費を3,000円に設定して計画していたのですが全然参加者が集まらなくて、500円まで下げてちょっと集まったくらいでした。二度目の開催では前回とは違うテーマで企画を考えて、多くの参加者が集まって、内容も良かったと思うし人が集まったことが嬉しくて印象に残っています。
西口)二度目はどんなテーマに変えたのですか?
田口)テーマも体験内容も全部ガラッと変えました。一回目は有松絞りという伝統工芸品を使って開催していて、この時は事前に体験キットを参加者にお送りして、お家で布を染める体験をしてもらい、イベント内では職人さんの技術とかを見てもらって、染色実験をするというものでした。
しかし、職人さんにお話しいただく時間がちょっと少なかったりしたので二回目は、名古屋仏壇さんの仏壇作りの工程の一つにある金箔張りに着目し、金箔張り体験を職人さんにレクチャしてもらいながら自宅できるというイベントを開催しました。金箔張りができるという事に興味持ってくださる方が多く、幸い参加者も増えてくれて嬉しかったです。
西口)自分たちで調べていく中で、なぜ伝統工芸品とSTEAM教育を掛け合わせようと思ったのですか?
田口)もともと伝統工芸品の「需要が低迷している」という課題を解決するためにどんなことをしたら良いのかを考えており、ちょうどその頃にSPIRALという色んな業界の方々や専門家の方をお呼びして、一緒にその分野での新しい課題の発見や自分たちがより良くできることについて考えるイベントがありました。 そのイベントで、DONGLESという会社がSTEAM教育に関するオンラインイベントを小学生を対象に継続開催しているということを知りました。そこでSTEAM教育とは何か調べたところ、興味や関心を育てるといった教育方法で、伝統工芸品と組み合わせられたら伝統工芸品に対する興味を持ってもらえるのではないか、効果的な発信ができるんじゃないかと思い、それがきっかけで『伝統工芸品×STEAM教育』が生まれました。

松榮)養蜂活動から派生して地域のことや伝統、教育など色んな分野に目を向けていて、コミュニティーがどんどん広がっているという感覚、養蜂っていうのを通しながら色々広がっていく感覚をどのように捉えていますか?
田口)私が1年生のときに、顧問だった先生から「多面的に捉えて物事を考える」ということを教えてもらいました。今もこの助言を受けて、商品開発やイベントなどを考えています。私たちは養蜂・地域活性化・名古屋の環境意識の向上の三つがこの活動のベースになっているという事を入部当初から教えられ続けてきました。しかし、顧問の先生の「多面的に捉えて物事を考える」という言葉について考えた時に、養蜂活動一本だけだと養蜂に興味のある方しか話を聞いてもらえない、興味のある方にしか届かない発信になってしまうなどの偏りを感じていました。そこで「はちみつを使ってこんな商品を作ったらもっと他の方にも届く発信になるのではないか」など、他の地域や活動に目を向けて多面的に活動する方向にシフトしていきました。それから活動していく中で発想を変えたからこそ発展しているんだなと感じるようになりましたし、これまで続けてきた先輩方の下地作りのおかげで、今の自分たちもかなり自由度高く養蜂活動ができていると思います。養蜂関連のことしかやっちゃいけないのかなと思うことなくいろんなことに挑戦できているというのはすごくいい環境が作れているということではないかと思います。多面的に活動してはいますが、地域活性化を目標にしているので養蜂も商品開発も地域の方に喜んでもらえるように活動していて、主としてユネスコ=ハチミツというイメージから大きくは離れないようにしようという意識は持っています。